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うつわ道楽

No.292 南瓜のポタージュ

 美味しそうな南瓜を見つけて買って来た。砂糖と醤油で煮付けにしたら、味は良いし、この時期にしては水っぽさも無くて美味しいのだけれど、皮が硬い。残りの分は皮を取り除いてポタージュスープを作った。

南瓜だけだと物足りないので、いつも玉葱も使う。薄切りにした玉葱を甘味が出るまで炒めて、その後皮を取って小さめに切った南瓜を加える。水を少し加えて南瓜が煮崩れるほど柔らかくなったら、フードプロセッサーにかけて味噌漉しの網で漉す。良い濃さになるくらいに牛乳を加えて味を整える。少し手間だけれど、漉す事で舌触りが滑らかなスープになる。

 器は伊万里のそば猪口。底に向かって窄まった小振りなそば猪口で、手前と反対側側面に素朴な草木が描かれている。この、逆円錐形の形と高台の作りから、江戸前期の伊万里と思われる。

とろみの有る肌、少し濁りのある白磁の色に南瓜の黄が映える。華奢な器を引き立てようとソーサー代わりに以前(2021/4 No.18)も登場した銀輪の漆皿を使い、ガラスのスプーンを添えた。南瓜や馬鈴薯のスープは底に沈澱しやすいから、混ぜながら頂くのが好ましい。皿の縁の銀色とガラスのスプーンが涼しげに映る。

器 伊万里焼 そば猪口 径7,5cm 高5,5cm

作 不明

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No.291 茄子の揚げ浸し

 小振りの茄子を見つけて、素揚げにした。これをシンプルに生姜醤油でいただくか、出汁醤油を掛けて揚げ浸しで熱々のまま、あるいはよく冷やして食べるか。夏の我が家の定番メニューだ。今日はどちらにしようかと考えたけれど、ちょうど今が旬の万願寺唐辛子もあるので一緒に煮浸しにする事にした。皮目に細かく隠し包丁を入れた茄子、小さく穴を開けて空気の逃げ道を作った唐辛子と生麩も素揚げして、盛り合わせた。これも食べる時におろし生姜を加えると風味が加わって更に良い。

万願寺唐辛子は、関東でもよく見かけるようになった。そのままグリルで焼いて食べることが多いけれど、素揚げにすると色も鮮やかだし、甘味も増して感じる。今回は漬ける出汁醤油に少し大根おろしを加えたので、丸ごとの茄子や唐辛子にも出汁が絡みやすく、美味しくいただいた。

器は萩焼で、大きめな平鉢の向附を使った。桃色の地肌に白く御本が浮かぶ。萩焼の第12代 坂 高麗左衛門 (本名達雄1949〜2004)のもの。先代の11代 高麗左衛門 が亡くなった翌年の1982年に先代の息女と結婚し、更に先代の妻で、結婚した娘の母である幸子と養子縁組をし、萩藩御用窯の坂窯を継いだ。達雄は東京生まれで、東京芸術大学の日本画を学んだ後に陶芸の道に進む事になったらしい。坂窯伝統の井戸形茶碗をはじめ、日本画の要素を活かして花などを描いた萩焼も残している。この向附は、萩の土と窯の火が作り出した萩焼らしい、華やかな器だ。

器 萩焼 輪花組鉢  径17cm 高4,5cm

作 第十二代 坂 高麗左衛門

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No.290 コーヒータイム

 地元のスーパーで、眼について思わず手に取ったマドレーヌ。子供の頃の好物だった。今は美味しい洋菓子が沢山あって、記憶の底に埋もれていたけれど、見つけたら買わずにはいられない。現在頃また流行っている昭和レトロそのもの、のような花柄の紙箱。神田精養軒は2009年に倒産し、その後ファンの熱い要望で復活したそうだ。今どきはマドレーヌと言うと、いわゆるマドレーヌ型で焼かれたフランス菓子。シェル形の平たくて丸味のある形だけれど、ここのマドレーヌは小さいカップケーキ形で、盛り上がった形が特徴。当時はマドレーヌ型など知らないから、この形がマドレーヌと思い込んでいた。

少し厚手のしっかりした銀色のカップに入って、底から縁に向かってギザギザした凹凸、そこにタネを絞って焼き上げるから山型に盛り上がってあの形になるのだろう。今も同じ、変わらぬ形と大きさに焼かれたマドレーヌだけれど、カップは銀色ではなく紙に変わっていた。

 このマドレーヌは1965年に誕生したらしい。私が子供の頃はこのマドレーヌとアーモンドピットがとても好きだった。どこか百貨店などに出掛けて見つけたらねだって買ってもらう、そんなお菓子だった。卵たっぷりの黄味の濃い生地にバターが香って昔と変わらぬ美味しさだ。濃いめのコーヒーを淹れて味わった。

 マドレーヌに合わせて、小さめのカップ&ソーサーを使った。Clarice Cliff (クラリス クリフ England)のもの。カップの尖った持ち手やポットの形状はいかにもアール・デコ調で可愛らしい。幾何学で構成された形状に、筆のタッチが残る優しい色使いの花が描かれている。Clarice Cliff は、もっと強い色の印象がある。それが “らしさ” ではあるけれど、かなり個性的でもあるので使うにもパワーが必要。この Clarice Cliff は安らぎの時間に似合う器だ。

我が家には、このカップ&ソーサーが4客とポットが有る。作られた時代の “モダン” が詰まっていて、どんな場面で使われていたのだろう、と映画のワンシーンの様に思い浮かべて楽しんだ。

器 花柄 カップ&ソーサー と コーヒーポット 

カップ径7,5cm 高5,8cm ソーサー径12,5cm 高1,8cm ポット幅16cm 厚7,5cm 高19cm

作 Clarice Cliff (ENGLAND)

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No.289 壬生菜ご飯

 午後に出掛ける予定が有って、早めに、手軽に昼食を済ませたい時がある。忙しいから時間をかけて用意したり、後片付けをする暇がない。そんな時は、朝食の後片付けの時におむすびを作っておく。卵焼きと常備菜の蓮根のきんぴら、漬物などを一皿に盛り合わせる。これなら常温でそのまま美味しくいただける。ご飯やおかず、と何皿もレンジで温める必要もないし、食後の片付けも楽。冷凍してある出汁入りの味噌と具材を熱湯で溶いて自家製即席味噌汁も加えれば、お手軽ランチの出来上がりだ。

おむすびは、漬物の壬生菜とちりめんじゃこ、白胡麻の混ぜご飯。若い頃、お弁当によく作っていたお気に入りのレシピだ。家族が京都へ出掛け、この壬生菜と大好きなお店の柴漬けを買って来た。忙しい時の賄いランチではあるけれど、この一皿に私の好物が詰まっている。

 盛り合わせたのは、御本の皿。縁がないので盛り沢山に盛っても形になる。作ったのは杉本 貞光(1935〜)。生まれは東京だが、33歳の時滋賀県、信楽に穴窯を開き茶陶の制作を始めた。その6年後、京都の大徳寺 立花 大亀 老師に師事し禅の教えと “侘び寂び” の世界を学んだそうだ。この 寺垣外窯(てらがいと かま)の名の由来もその辺りに有ると思われる。『垣外』は垣根や塀の内外、或いは周囲を意味する言葉だ。聞いたことのない言葉だったがまたひとつ学ばせてもらった。

杉本 貞光はその後も伊賀、長次郎風の黒楽、光悦風の赤楽、高麗茶碗などを研究し、現在もその制作を続けていらっしゃる。大亀老師からは『桃山に帰れ』との言葉を賜ったそうで、その教えに励んでおられるようだ。1990年代からは海外でも個展を開かれている。

この皿のような『御本』は茶碗は有るけれど、皿は珍しいのではないだろうか。飾り気のない優しい美しさに気持ちが落ち着く。時間がなくて忙しい時でも、お皿一枚なら大事に扱える。慌ただしい食事の時間も眼と気持ちは楽しみたい。

器 御本 丸皿  径17cm 高1,5cm

作 寺垣外窯 杉本 貞光

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No.288 茄子の肉味噌

 旬を迎えた茄子。八百屋の店先にはいくつもの種類の茄子が並んでいる。料理によって、焼き茄子や漬物、と使い分ける。時々見かける ”とろ茄子” と言う名前で売られている皮の白い茄子を買って来た。径が8センチほどの太さが有り、皮が張って艶があって美しい茄子だ。

厚めの輪切りにして、香りの少ない白い胡麻油で両面を焼いてからお出汁で煮たら、身は名前の通りとろっとしてとろけるようだ。このままでも美味しいけれど、山椒の実をピリッと効かせた鶏ひき肉の味噌を乗せて食べることにした。

 使った器は古染付。手の付いた花籠に生けた花が見込みに描かれ、器の縁に沿って細い二重の線が回されている。呉須の一色しか使われていないけれど華やかだ。細かい装飾的な絵は加えられておらず、すっきりとした印象を与える。箱は無く、我が家には2客しかない。ふと目に入る度に、なぜか気持ちが浮き立つ。梅雨のどんよりとしたお天気にはこんな器を使って楽しみたい。

器 古染付 花籠向付  径14cm 高4,5cm

作 不明