No.303 鶏と栗 秋の煮物

前回に続いて菊を模った器を使った。今回は、第6代 大樋 長左衛門 の大振りの鉢だ。京の都で利休の時代に 楽 長次郎 によって作られた楽焼は、大樋焼と質感が似ていて、共通性を感じていたが、その発祥は知らずにいた。
調べてみると、大樋焼は楽家の第4代、一入の弟子が金沢の大樋村で開いた窯で、楽と同じく、轆轤を使わず手捻りで作られる。ざっくりとして柔らかい土味、温かみのある質感や軽さは楽焼と共通している。
加賀藩主第5代の前田 綱紀 が1666年(寛文6年)に裏千家第4代の 仙 叟宗室(せん そうそうしつ)を茶道普及のために京から招き、それに道々したのが 一入 の高弟であった初代となる 長左衛門 だった。金沢郊外の大樋村の粘土によって、楽焼に近い性質を持った器を焼く窯を開いたのが始まりらしい。加賀藩、前田家の御用窯として栄え、現存する唯一の 楽 の脇窯だという。楽焼は釉薬に赤と黒を使うが、大樋焼は飴釉と呼ばれる光沢のある深い飴色が特徴だ。
まるで、漆のため塗りのような透明感。大樋焼の飴色は器として何を盛っても料理が映える。横に広く、見込みの広いこの鉢には、秋の恵みの栗を使った煮物を盛り合わせた。骨付きの鶏と栗、人参、椎茸、いんげん。大振りで厚手の鉢は盛り沢山の煮物を受け止める懐の広さを感じる。

器 大樋焼 菊鉢 径30,7x23cm 高9cm
作 第6代 大樋 長左衛門