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うつわ道楽

No.306 柿

 いただいた柿が数日経って、私好みの熟れ具合になった。カリカリより、柔らかく色も濃くなった頃が好きだ。鮮やかな柿の色が美しい。

少し前から、何かを盛ってみたいと思っていた盆を思い出した。くり抜きの木地の大きな盆、というよりは鉢のような深さのある器だ。木目が残る木地に、厚く塗り重ねた色漆で牡丹の花と蜂が描かれている。高蒔絵と言うらしい。作者は、金城 一國齊(きんじょう いっこくさい)。

初代 金城 一国斎は、大阪で漆を学び、その後、尾張徳川藩の小納御用塗師となる。初代の次男にあたる二代は、諸国を回って彫漆(塗り重ねた漆塗の層を彫刻する技法)の技術を習得。その過程で “高盛絵(たかもりえ)”を考案し、大阪で作品を作ったが、天保14(1843)年、眼病治療のために広島へ移る。自らの漆芸を江波焼陶工の長男・木下兼太郎に伝えた。その後、兼太郎は三代一国斎を襲名して高盛絵の技術を高め、それ以後、高盛絵は広島の伝統工芸として伝えられている。

高盛絵は漆塗面又は木や竹の素地に錆(さび、砥粉と漆液を混ぜたもの)を盛り上げ、固まった後に彫刻刀で整形し、色漆を塗って仕上げる技法だ。中国由来の彫漆が持つ立体的な効果をねらいつつも、彫と塑(そ)は中国の技法との違いで模様の形態や表現に柔らかさと自由度が増し、動植物をより写実的に表現出来るようになった。

この盆は、供箱の蓋裏に、明治22年 12月 と在るので明治から大正にかけて活躍した 第三代 一國齊(1829〜1915) の作と思われる。高蒔絵の技術を完成させた、その人だ。ここに描かれる花の立体感や色の鮮やかさ、そして特に蜂の表現の精密さに眼を奪われる。この盆は何を盛っても映えるけれど、何を盛っても主役はこの圧倒的な迫力の高蒔絵だ。

器 花蜂文 高盛蒔絵 木盆  径36×33,5 高6,5cm

作 第3代 金城 一國齊