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うつわ道楽

No.286 水茄子の浅漬け

 近頃は茄子も種類が多い。元々、地域性のある品種はその地方の料理として訪れた時の楽しみであったのだけれど、今は地元の八百屋でも手に入る。私が子供の頃から食べていたのは宮城の長茄子漬け。両親の由来が仙台なので、馴染みがあった。焼き茄子に適した長茄子は主に九州、熊本産で長さが50センチ程もある。こちらも今や地元の八百屋で手に入るのだけれど、宮城の漬物の長茄子は長さがヘタを入れても10センチ程と小さく、形のまま漬け込まれている。

こうしてみると茄子の漬物は多い。長茄子漬けに泉州の水茄子、柴漬けにも茄子が入っている。イタリア料理や地中海料理、中華料理にも茄子は欠かせない。油と相性が良い反面、油っ気の無い漬物でもその実力を発揮する、茄子は不思議な野菜だなあと改めて考える。

今年も水茄子が出て来たので浅漬けを作った。使った小皿は瀬戸の加藤 春岱(1802〜1877 かとう しゅんたい)。多彩な手法を使いこなした方らしいが、この皿は型もの。轆轤でひくのではなく、土を型にはめて作られている。見えにくいのだけれど、見込みと皿の縁に凹凸で模様が付けられている。散っている黒い点は、鉄釉を吹墨で散らしたもの。呉須の吹墨は良くあるけれど、私はこの色だとすぐには吹墨と判らなかった。

 江戸から明治にかけて瀬戸焼の陶工だった春岱は、瀬戸赤津御窯屋三家の一つの仁兵衛家の16代(15代とも)弥宗右衛門景典春山を父に持つ。春岱は技能の高い陶工だったがその人生は紆余曲折だったらしい。その腕を持つ春岱がこの型ものの皿をどんな経緯で作ったのだろう。

轆轤で引いた、陶工の腕を魅せる味のある器とは違うけれど、それとは別の素朴で親しみやすい魅力がある。薄くて形も揃うので、実用的な使いやすさがある。

器 瀬戸 型物 吹墨小皿  径12cm 高2cm

作 加藤 春岱