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うつわ道楽

No.289 壬生菜ご飯

 午後に出掛ける予定が有って、早めに、手軽に昼食を済ませたい時がある。忙しいから時間をかけて用意したり、後片付けをする暇がない。そんな時は、朝食の後片付けの時におむすびを作っておく。卵焼きと常備菜の蓮根のきんぴら、漬物などを一皿に盛り合わせる。これなら常温でそのまま美味しくいただける。ご飯やおかず、と何皿もレンジで温める必要もないし、食後の片付けも楽。冷凍してある出汁入りの味噌と具材を熱湯で溶いて自家製即席味噌汁も加えれば、お手軽ランチの出来上がりだ。

おむすびは、漬物の壬生菜とちりめんじゃこ、白胡麻の混ぜご飯。若い頃、お弁当によく作っていたお気に入りのレシピだ。家族が京都へ出掛け、この壬生菜と大好きなお店の柴漬けを買って来た。忙しい時の賄いランチではあるけれど、この一皿に私の好物が詰まっている。

 盛り合わせたのは、御本の皿。縁がないので盛り沢山に盛っても形になる。作ったのは杉本 貞光(1935〜)。生まれは東京だが、33歳の時滋賀県、信楽に穴窯を開き茶陶の制作を始めた。その6年後、京都の大徳寺 立花 大亀 老師に師事し禅の教えと “侘び寂び” の世界を学んだそうだ。この 寺垣外窯(てらがいと かま)の名の由来もその辺りに有ると思われる。『垣外』は垣根や塀の内外、或いは周囲を意味する言葉だ。聞いたことのない言葉だったがまたひとつ学ばせてもらった。

杉本 貞光はその後も伊賀、長次郎風の黒楽、光悦風の赤楽、高麗茶碗などを研究し、現在もその制作を続けていらっしゃる。大亀老師からは『桃山に帰れ』との言葉を賜ったそうで、その教えに励んでおられるようだ。1990年代からは海外でも個展を開かれている。

この皿のような『御本』は茶碗は有るけれど、皿は珍しいのではないだろうか。飾り気のない優しい美しさに気持ちが落ち着く。時間がなくて忙しい時でも、お皿一枚なら大事に扱える。慌ただしい食事の時間も眼と気持ちは楽しみたい。

器 御本 丸皿  径17cm 高1,5cm

作 寺垣外窯 杉本 貞光